nakamura795

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関係刺激によるマインドフルネスのまとめ

関係刺激によるマインドフルネスのまとめ

マインドフルネス(mindfulness)の機能を、関係刺激のモデルを利用してまとめた。 理解のために具体例や反例を表で挙げている。

markdownソース https://drive.google.com/file/d/1OYa_VzY_hxrpdFWVt0cPACK4cDvgcMrN/view?usp=sharing

モデルとは

  • 機能的文脈主義(Functional Contextualism)の科学哲学による。
  • モデル
    • 定義:考えの枠組みのこと。
    • 私達はモデルによって世界(心、自身も)を理解し予測している。
    • 私達はモデルによって世界に影響を与えている。
  • 予測と影響(Predict and Influence)
    • 適用するモデルによって、予測と影響の度合いが異なる。
    • 予測と影響の度合いが高いモデルは、私達の目的達成のためにより役に立つモデルであると言える。
    • モデルは真実そのものではない。
  • 低次なモデル(独自用語)
    • 定義:予測と影響の度合いが相対的に低いモデル。
    • 例:今このように行動すれば(しなければ)、良い(悪い)結果になるだろう。(因果と比較の関係フレームが偏って適用されがち)
  • 高次なモデル(独自用語)
    • 定義:予測と影響の度合いが相対的に高いモデル。
  • 高次なモデルを適用すべき理由
    • 意図して高次のモデルを持たないと、自動的に低次のモデルを、あなたがあなた自身と周りに適用してしまい、自身と周りに対する予測と影響の度合いが低いまま保たれてしまうため。
  • 本稿では、心を予測し影響を与えるための高次のモデルを提示する。

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考え枠組み

心の位相的特徴に対する考え枠組み

  • 心の位相的特徴(独自用語)
    • 定義:心の位置関係から見た特徴のこと。
    • 生体と心は別である。
    • 発達という過程によって、生体に次第に心が形成されていく。
    • 自分の心から自分の心に直接影響を与えることは幾分可能。
    • 自分の心から他者の心に直接影響を与えることは現時点では不可能あるいは限界がある。
  • 心の理論(Theory of Mind)
    • 定義:他者の心の状態、目的、意図、知識、信念、志向、疑念、推測などを推測する心の機能のこと。
    • 心の理論が成立するのは、他者の心に直接影響を与えられない位相的特徴があるため。
  • 文脈(Context)
    • 定義:心が影響を受ける周りの環境をまとめた概念。
    • 他者の心には、文脈に依る関係刺激(後述)を提示して間接的に影響を与える。
    • 自分の心にも文脈に依る関係刺激を提示して、予測と影響を高める。

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心の位相的特徴

関係刺激に対する考え枠組み

  • 文脈的行動科学(Contextual Behavioral Science)による。
    • 文脈的行動科学では、行動を、文脈内で果たしている機能として理解する。行動が環境内でどのような結果をねらいとしているかを検討すれば、行動への予測と影響を高められる。(RFTをまなぶp12より)
  • 言語行動(Verbal Behavior)
    • 例:思考、考え、思い、感情、気分、衝動など。
  • 刺激の機能:刺激は、その内容に依る次の行動を促す機能を持つ。
  • 刺激の指し示し(独自用語)
    • 定義:刺激の内容を「刺激の指し示し先」と表現する。
    • 効果(定義した理由):指し示し先は過去や未来・空想であることが常だが、指し示し元は常に今この瞬間の近傍である。そのため指し示しを意図した瞬間、私たちを今この瞬間の近傍に引き戻す。
  • 関係刺激(独自用語)
    • 定義:複数の刺激が関係づけられ生成された刺激。言語などは、そのような刺激が生成される性質を持つ。
    • 効果:RFTには関係反応という用語があるが、理解のため、このような内的な概念を仮定する。
    • 例:言葉、例え、メタファ、マインドマップ
  • 刺激機能の変換
    • 性質:関係刺激の内容に依る行動は、元のそれぞれの刺激の内容に依る行動とは大分異なる。
  • 直示(Deixis)
    • 定義:発話される場面によって指示する内容が決定される言語表現。
  • 関係フレームづけ
    • 説明:物事を様々な種類の関係として当てはめるような、人間の行動のこと(RFTを学ぶp116をかみ砕き)。
  • 関係フレーム
    • 説明:関係フレームづけを構成する、様々な関係を抽象化したもの。
    • 対人視点、時間視点、空間視点、時間、比較、等位・整合、反対・対立、相違・区別、因果、部分・階層
  • 表:文脈的行動科学の随伴性(Contingency)の用語について、相互関係により意味が明らかになるため、書き下しによる説明を省略する。

表:直示の区分

直示 英語
人称直示 personal 私、あなた、彼、お母さん、いとこ、社長
時間直示 temporal 今、過去、未来、今日、明日、今週、来月、来年
場所直示 spatial ここ、そこ、あそこ、右、上、前
談話直示 discourse これ、それ、あれ、この、その、あの

表:刺激機能の変換

刺激 刺激の指示先 関係刺激の例 変換された刺激の指示先
the SMALLER BALL NOT a SMALLER BALL
the BIGGER BALL NOT a BIGGER BALL

表:文脈的行動科学の随伴性

- 機能文脈キュー 関係文脈キュー 条件性弁別 先行刺激 行動 短期結果 長期結果
略記 Cfunc Crel Cd A B C C
英語 Functional Contextual Cue Relational Contextual Cue Conditional Discrimination Antecedent Behavior Consequence -
POINT to the BIGGER BALL 。○ ○← Good! 言語の理解

参照(デッドリンク):http://anzact.com/wp-content/uploads/2014/03/HISTORY-OF-RFT.pdf

考え枠組みを利用して得られる知見

  • 実在感について
    • 実在感・真実感・真理感(独自用語)
      • 定義:実在している・真実である・真理であるという感覚。刺激が指し示している内容が実在し真実であるように感じてしまう現象。
      • 効果:「実在論」「真実」「真理」に内在している高い信憑性を一旦無効化(invalidate)する。
      • 例:言語刺激「梅干し」を提示すると梅干しに関する様々な体験が想起される。
    • 実在度・真実度・真理度(独自用語)
      • 定義:実在感・真実感・真理感の割合・度合い。
    • 関係刺激の実在感・真実感・真理感
      • 性質:関係刺激が指し示している内容が実在し真実であるように感じてしまう現象。
      • 例:言語刺激「梅干しを漬けましょう」を提示すると樽・瓶に関する体験が想起される。
      • 起源(推定):現実に対応する各刺激が恣意的に関係づけられた関係刺激も、指し示し先の内容が実在するように生体には感じられてしまう。
  • 恣意的に生成された関係刺激が指し示している内容が持つ、存在可能性に関する性質。
    • 論理学的・数学的に存在不可能。
    • この世界の物理学的に存在不可能。
    • 現時点では存在しないが、努力や技術の発展等により実現可能。
    • 現時点で既に存在している。
    • 存在可能な世界または存在不可能な世界があり得て、この世界がどれに該当するか不明。
  • 関係刺激について
    • 関係刺激と一貫性:確立された関係刺激は、今度はそれ自体が一貫性がある、意味が正しい、意味が分かるような随伴性となり、以降の行動に影響を与える。このプロセスは幼少期から現在まで積み重ねられてきている。(臨床行動分析のABCより)
    • 関係刺激の影響力:確立された関係刺激による言語的な随伴性は、言語以外の(実際の)随伴性よりも強い影響力を持つ。(臨床行動分析のABC p197より)
    • 確立された刺激関係を消すことの困難性:上記の理由より、確立された関係刺激の内容と反するような関係刺激は確立しづらく、抵抗反応性を受けることもある。(臨床行動分析のABC p195より)
    • 関係刺激への影響の与え方について
      • 非効率的:確立された関係刺激と反するかのような関係刺激を提示する。
      • 効率的1:確立された関係刺激に新しい関係刺激を「加える」かのような関係刺激を提示する。
      • 効率的2:確立された関係刺激による随伴性に反するような、実際の随伴性を指し示す関係刺激を提示して、生体を実際の随伴性の中に入れる。
  • 誤推測(独自用語)
    • 定義:指示に対して、対象者が低次のモデルを適用して誤解(誤った解釈)をしてしまう現象。
    • 効果:発信された情報を、受け取り側の理解・解釈のされかた・受け取られ方と、それによる影響(機能=結果の内容)によって、分析・評価することができる。発信側は、受け取り側の誤推測による影響を予測して、発信する情報を吟味することができる。
    • 後述「危険な表現と代替案」で、現在、自己啓発・スピリチュアル・仏教・宗教・心理学の各業界で流布している表現について、誤推測に基づいて詳細に分析・評価している。
    • 関係する現象(どちらが原因・どちらが結果かは現時点で不定)
      • 誤概念(misconception)
        • 教育心理学の科学教育における用語
        • 類似の用語
          • 素朴概念(naive concept)
          • 前概念(pre-conception)
          • 現象的原理
          • 子どもの科学(children's science)
          • 代替的な思考の枠組み(alternative framework)
        • 因果スキーマ(causual schema)(原因と結果を結びつける思考の枠組み)(因果フレーム)に過度に縛られることにより、誤概念は支えられる(鈴木享, 2008)。
        • 思考・判断・表現への自信度が高い対象者ほど誤概念が修正されにくい(阪本司毅, 2015)。
        • いくつかの誤概念は歴史的に先立つ。その分野の先駆者が支持した誤った考え方が、今日の生徒たちに映し出されている(フィッシャー,1985)。マインドフルネスは科学としては新しい分野のため、機能的(予測と影響の観点)に誤った考え方を支持している先駆者が存在しても不思議ではない。
      • デマ・流言・伝言ゲーム
        • 平均化・平準化、強調化、同化・合理化・統合化(デマの心理学 G・W・オルポート、L・J・ポストマン, 1952)
        • 流言の流布量は、主題の重要さ、問題の主題にかかわる証拠のあいまいさに比例し、批判的能力に反比例する。(A. Chorus, 1953)
      • 認知的不協和の解消
        • 行動の変化、認知の変化、新たな認知の付加、情報への選択的接続
      • 認知の歪みの各項目(第一・第二世代の認知行動療法)(ベック、バーンズ)
        • すべき思考、マイナス化思考、レッテル貼り、一般化のしすぎ、個人化と責任の押し付け・自己関連づけ、全か無か思考、心のフィルター、感情的決めつけ、結論の飛躍(先読みの誤り、心の読みすぎ)、誇大視・拡大解釈と過小評価
      • 私たちの文化は、良い気分主義(体験のコントロール)と、思考との字義どおりの相互作用とを育む文脈が非常に支配的かつ自動的なので(ACTをまなぶxviii)
      • 防衛機制(defence mechanism)(精神分析学・人格心理学の用語)
        • 否認、歪曲、投影、分裂、躁的防衛、統制、置き換え、外在化、知性化、隔離、合理化、抑圧
      • バイアス(認知-)
        • 確証-、根本的な帰属の誤り、アンカリング、正常性-、生存者-、後知恵-
      • ヒューリスティック
        • 利用可能性-、代表性-、係留と調整、感情性-
  • 数秒前マジック(独自概念)
    • 性質:発生した思いはこれまでの習慣の結果であり、機能文脈キュー・関係文脈キュー・条件性弁別・先行刺激に続いて発生したものであり、認識した途端に数秒前の状態になるため、直接制御不能である。
    • 思いの内容の妥当性を数秒かけて検証するのではなく、数秒前の思いの真実感の強弱・生滅を数秒かけて観察してみよう!と誘導する。
    • 言葉では「思いが生じた・滅した」「思いの真実感が強くなった・弱くなった」など現在完了形を使用する。
  • 心の位相的特徴と等位なメタファ
    • 心理療法はバドミントンに似ている。訓練者は被訓練者のコートに入れない(追加ルール)ので身体的誘導ができない。訓練者のショット(内的行動)でシャトル(関係刺激)を飛ばし、被訓練者のショットを誘導(シェイピング)するか、良いショットと悪いショットを訓練者が実演して見せる(汎化模倣)(独自概念)
  • 現実から逃げているわけではない
    • 関係刺激(私的体験)と現実が一つに見えてしまうため、私的体験から逃げたり、抑えようとしたり、制御しようとしたりしていることが、外からは現実から逃げているように見える。

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存在可能性

表:数秒前マジックの時間関係

概念\時間 過去 数十秒前 数十秒後 未来
思いは数秒後に数秒前の残り香として認識できる - 思い ←認識 - -
思いの指示先である過去未来の内容は実体とは限らない 指示先=内容≠実体 指示元=思い - - 指示先=内容≠実体
過去や未来の思いはタイムスリップでもしないと変えられない ✕変更 ✕変更 - ✕変更 ✕変更
思いはこれまでの習慣の結果で発生したもの 習慣⇒ 思い - - -
思いは機能文脈キューに続いて発生したもの - Cfunc→思い - - -
思いは関係文脈キューに続いて発生したもの - Crel→思い - - -
思いは条件性弁別に続いて発生したもの - Cd→思い - - -
思いは先行刺激に続いて発生したもの - A→思い - - -
前の思いは次の思いの先行刺激になる - 思い⊂A→思い - - -
思いの残り香が十分残っている過去1分位は観察できる 内容 思い ←観察 - 内容
思いの連続を観察することで、思い行動が分化強化される 内容 思いの連続 ←観察 結果⇒分化強化 内容

表:文脈的行動科学の概念の時間関係

概念\時間 過去 数十秒前 真実感 数十秒後 真実感 未来
思いの内容を反芻すると反芻が維持される 内容 無視 反芻 反芻は妥当⇒反芻を維持 内容
思いの内容は分化強化・弱化に影響しない 内容 無視 反芻 内容≠実体・結果⇒✕分化強化 内容
不安 - 無視 不安に依る行動 非柔軟性を維持 内容
後悔 内容 無視 後悔に依る行動 非柔軟性を維持 -
衝動 内容 無視 衝動的行動 非柔軟性を維持 内容
認知的フュージョン 内容 無視 思いに依る行動 非柔軟性を維持 内容
私的体験の回避 内容 無視 回避行動 非柔軟性を維持 内容
観察 内容 思い 観察行動 視点取得・ウィリングネス拡大 内容
フュージョン 内容 思い フュージョン 新規行動・結果の余地 内容
アクセプタンス 内容 思い アクセプタンス 新規行動・結果の余地 内容
と思った技法 内容 思い と思った 新規行動・結果の余地 内容
視点移動 内容 移動対象 視点移動 柔軟性が拡大 内容
価値 内容 価値 コミットメント 柔軟性・価値が拡大 内容

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数秒前マジック(視点固定)

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数秒前マジック(視点進行)

表:数秒前マジックを指し示すメタファ

メタファ 説明
思いは残り香 思いは数秒後に数秒前の残り香として認識できる
思いは3歩前の足跡 思いは数歩前の足跡として認識できる
タイムスリップ 数秒前にタイムスリップして思いの発生を阻止することはできない
稲光と雷鳴 私たちが思いを感じるとは、雷鳴のように発生し終わって何秒かたったものを聴いているようなもの(特に怒りと結び付けやすい)
救急車のサイレン 救急車を見てからサイレンが耳に伝わるまでの遅延と対応付ける
五蘊 色受想行識を数秒前の出来事としてただ認知する。五蘊を途中で阻止するというアイデアは無効化される
味わうエクササイズ 舌にのせるタイミングと味について思いが廻るタイミングの差と対応付ける
水滴と波紋 波紋は、水滴が数秒前に落ちたことを示している
足の小指 足の小指をぶつけて痛みが伝わってくる時間の遅延と対応付ける
シャワー シャワーをひねって水がでるまでの遅延と対応付ける
反応が遅いボタン ボタンを押してから反応に時間のかかる機械(スマホ、テレビのリモコン、PCなど)でイライラすることに追加して、機械の思いの遅延を感じてみる
遠いは過去 遠くのことを認知することは過去の出来事として認知することを意味する(何億光年)

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心の位相的特徴のメタファ

表:ACTの行動随伴性(創発のための図)

先行刺激 行動 長期結果
思考感情刺激 衝動的行動 煩悩の世界が拡大、価値の随伴性との接触が減少
- ↖数秒前マジック参照 ↗推測↓代替行動分化強化↑反応妨害法
対象指示 観察行動 視点取得・ウィリングネスが拡大
視点移動指示 視点移動 関係反応的柔軟性が拡大
- ↘推測↓行動活性化
価値刺激 コミットメント 価値が拡大

表:直示関係をずらすテクニックの分類

直示 直示 テクニック 横断的テクニック
ここ そこ 一般的な脱フュージョンの技法 直示的フレーミング課題
このとき そのとき 数秒前マジック(思いは残り香) 同上
慈悲の瞑想 同上

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直示関係をずらすテクニックの分類

自分の心を予測し影響を与える方法

  • 当てはめてみるアプローチ(心理教育)
    • 前述「考え枠組みを利用して得られる知見」を自分の体験に当てはめてみる。
    • 後述「煩悩分割表」を数秒前の自分の思いと感情に当てはめてみる。
    • 後述「危険な表現と代替案」を世の中の文献に当てはめてみる。
    • 後述「メタファの誘導について」を自分の体験に当てはめてみる。
  • 身体感覚からのアプローチ(瞑想的)
    • ボディスキャン:自分の身体感覚に注意を向ける。(指先、腕、お腹、体幹、足、肺、鼻先)
    • 身体感覚に注意を向けるかのように、数秒前の自分の思い・感情の真実感に注意を向け反応拡大する(シェイピングを応用)。
  • 関係刺激の試行
    • 直示的フレーミング課題
      • 人称・時間・場所の入れ替えを提示して、各人称の状態を質問する。
      • 例:私は赤のつみき、あなたは緑のつみきを持っている。もしあなたが私で私があなたなら、私が持っているのはどれ?
      • 推移律(複合的相互的内包)があるので、直示の置き換え(もし彼が私で、今が数分前で、あそこがここだったら)だけで直示の入れ替えが発生する。
    • 柔軟な視点移動の試行(独自用語)
      • 人称・時間・場所の入れ替えを提示して、それぞれの人称の感情や思い等を推測する。
      • 例:もし私が嫌いな人で、嫌いな人が私だとしたら私はどう思いますか?
      • 仏教に「慈悲の瞑想」という、近いものが存在する。
      • 効果:関係刺激の一部は好子嫌子と強結合しており、視点移動によって自他の苦痛に接近にする効果があるため、関係刺激の柔軟性を高める。
    • 柔軟な関係刺激の試行(独自用語)
      • 様々な関係刺激を生成して、特定の内容を指し示す。※内容は世界に属していることも、していないこともある。
      • 関係刺激と内容の一致感を感じたり、妥当性を検証・確認する。
      • 関係刺激と内容の真実度(真実感の度合い)・実在度(実在感の度合い)・真理度(真理感の度合い)を感じる。
      • 意義:世界への予測と影響を高める。

表:柔軟な視点移動の試行

指示 入れ替えC' 入れ替えCD 入れ替えD'
時間→ 数十秒前 数十秒後
入れ替えA' そこ
入れ替えAB 私ここ
入れ替えB'

表:柔軟な視点移動の試行の困難度の例

直示 好子 変化 嫌子 変化 困難度
私の お金が 増える 苦しみが 減る
私の お金が 減らない 苦しみが 増えない
私の お金が 減る 苦しみが 増える
私の お金が 増えない 苦しみが 減らない
彼の お金が 増える 苦しみが 減る 中高
彼の お金が 減らない 苦しみが 増えない 中高
彼の お金が 減る 苦しみが 増える 低中高
彼の お金が 増えない 苦しみが 減らない 低中高

煩悩分割表

行動のねらいの例として、煩悩・症状を以下の表の見出しに分割して検討した。 ※以下の各文章の各パーツが実際に脳に存在する「ために」煩悩や症状が発生するわけ「ではない」。各要素は言語・非言語、シンボル・非シンボルが混合され、重ね合わされ、並列に想起され関係づけられる。

表:煩悩分割表の見出しと文脈的行動科学の用語の対応

- 直示 好子嫌子 変化 願望 行動 短期結果 長期結果
- Cd、Crel Cd、Crel Cfunc Cfunc B C C

表において、実際の行動は、省略した先行刺激Aや文脈の影響を受ける。

煩悩 直示 好子嫌子 変化 願望 行動 短期結果 長期結果
- - - - - - 達成感(好子増加による強化)、安心感(嫌子減少による強化) 非柔軟性な行動を維持
煩悩 直示 好子嫌子 変化 願望 行動
未来に私の お金が 増えて 欲しい 追求
未来に私の ものが 減るのは 守る
未来に私 自身が 傷つくのは 守る
不満 今の私の 現状が 低いのは 他を落とす
承認欲 常に私の 考えが 認められ たい 追求
先入観 常に私の 考えは 正しい はずだ 歪曲
おごり 常に私の 考えは すごい はずだ 歪曲
プライド 常に私の 自己同一性が 認められ たい 追求
プライド 未来に私の 自己同一性が 壊れるのは 守る
プライド 常に私に 名誉が 与えられて 欲しい 追求・歪曲
プライド 常に周りから 承認 され たい 追求
独占欲 常に私だけが 承認 され たい 追求・排除
軽蔑、侮辱 常に彼の 価値観を 受け入れるのが 軽蔑
無反省 常に私は 正当だから悪いことをしても 良い はずだ 理由付け
無反省 常に彼の 悪さが 重大な はずだ 理由付け
承認欲 過去に私が 感謝され なかったのが ひがみ
傲慢 常に周りより 能力があることを確認し 続けないと いけない 確認
憎しみ 過去に彼が私の 地位を 貶めたのが 復讐
怒り 常に彼が私を 思い通りに ならなくさせるのは 復讐
後悔 あのとき私は あのように すれば 良かった 後悔
ごまかし 未来の私の 利益・立場を 守り たい 偽る
騙し 未来に私の 利益・地位を 上げ たい 騙す
ケチ 今私の お金を 出すのは おしい ケチる
へつらい 未来に私の 利益・地位を 上げ・守り たい 諂う
死んだ後に私は 極楽で 永遠に生き たい 信仰
怒り 死んだ後に私は 地獄に 落ちたく ない 信仰
怒り 死んだ後に私は 永遠の虚無に なりたく ない 怒り
虚無感 死んだ後に私は 虚無なのだから この世では何をしても良い はずだ 開き直り
独占欲 常に私の 利益・地位を 独り占め したい 排除
孤独感 常に周りから 拒絶されて いるのが 連む
緊張 近未来の本番で 成功 しないと いけない 緊張
さみしさ 常に仲間が 周りに 居て 欲しい つるむ
悩み 常に私の 背反する2つのものが 増えて・減らないで 欲しい 悩む
近未来にお酒で 気分が 良くなり たい 飲酒
怠り 今お酒を我慢して 気分が 良くならないのは 怠る
怠り 今勉強して 面倒な気分に なるのは 怠る
いいかげん 常に仕事が 面倒なので 集中するのが いいかげん
無責任 未来に彼が どのように なっても 関係ない 無関心
嫉妬 常に彼だけが 利益・地位を 上げるのは だだをこねる

症状も同様に分割して検討できる。

症状 直示 好子嫌子 変化 願望 行動 短期結果 長期結果
- - - - - - 達成感(好子増加による強化)、安心感(嫌子減少による強化) 非柔軟性な行動を維持(不安感や劣等感も維持・強化)
症状 直示 好子嫌子 変化 願望 行動
悲しみ 今私が このような 状態なのは 回避
寂しさ 今の私を このような 状態に したい 追求
劣等感 常に私が 低く 見られるのが 回避
落ち込み 今私に この部分が あるのが 回避
不安 未来に私が あのように なるのは 回避
うつ 直後に私の うつが 深刻化するのは 回避
パニック 未来に私に ひどさが 増してしまうのは 回避
罪悪感 常に私が周りに 迷惑を かけているのが 回避
パニック 直後に私に パニック発作 発生するのは 回避
不安障害 直後に私の 不安が 増してしまうのは 回避
対人恐怖 直後に私が 人に会って恐怖感が 増してしまうのは 回避
高所恐怖 直後に私が 高所に行って恐怖感が 増してしまうのは 回避
広場恐怖 直後に私が 広場に出て恐怖感が 増してしまうのは 回避
閉所恐怖 直後に私が 閉所に閉じ込められて恐怖感が 増してしまうのは 回避
暗闇恐怖 直後に私が 暗闇に包まれて恐怖感が 増してしまうのは 回避
発表の直後に私に 恥ずかしさがが 増してしまうのは 回避
自殺企図 直後に死ねば私は この痛みから 解放される だろう 予期
自殺企図 直後に死ねば私は 心の安らぎが 訪れる だろう 予期
潔癖症 今私が 儀式せずに不潔感が 増すのが 儀式

個人の価値に基づくコミットメント(主体的・自律的な行動)を少し前面に出すことで、他の煩悩や症状の影響を相対化させることができる。 価値に基づくコミットメントも、環境との相互作用で学習され、発展していくものである。

価値 直示 好子嫌子 変化 願望 行動 短期結果 長期結果
- 私の - - 嬉しい コミットメント 達成感(好子増加による強化)、安心感(嫌子減少による強化) 柔軟性な行動が強化(自律性・主体性など)
価値 好子嫌子 変化
承認・尊敬 主体的な行動で承認・尊敬 されるのは
親和・交流 主体的な行動で親和・交流が 深められるのが
自然・環境 主体的な行動で自然・環境が 守られるのが
推し 主体的な行動で推しが 有名・幸せになるのが
家族 主体的な行動で家族が 守られるのが
自尊心 価値が 高まるのが
自尊心 自尊心が 高まるのが
自己実現 自己が実現 するのが

煩悩分割表の直示を入れ替えることによって、柔軟な関係刺激の試行に生かすことができる。 以下の例を読めば、各自の頭の中で関係反応が広がる感覚が発生するだろう。

直示 好子嫌子 変化 願望
未来に私の お金が 増えてて 欲しい
現在・過去に私の お金が 増えてて 欲しかったか・欲しいか
過去・現在・未来に彼の お金が 増えてて 欲しかったか・欲しいか
私と彼が入れ替わったら過去・現在・未来に私の お金が 増えてて 欲しかったか・欲しいか
私と彼が入れ替わったら過去・現在・未来に彼の お金が 増えてて 欲しかったか・欲しいか
直示 好子嫌子 変化 願望
常に私だけが 承認 され たい
過去・現在・未来に私だけが 承認 され たかったか・たいか
彼も常に私だけが 承認 され たいか
彼も過去・現在・未来に私だけが 承認 され たかったか・たいか
私と彼が入れ替わったら過去・現在・未来に私だけが 承認 され たかったか・たいか
私と彼が入れ替わったら彼も過去・現在・未来に私だけが 承認 され たかったか・たいか
直示 好子嫌子 変化 願望
未来に私 自身が 傷つくのは
過去・現在に私 自身が 傷つくのは 嫌だったか・嫌か
彼も過去・現在・未来に私 自身が 傷つくのは 嫌だったか・嫌か
自分と彼が入れ替わったら過去・現在・未来に私 自身が 傷つくのは 嫌だったか・嫌か
自分と彼が入れ替わったら彼も過去・現在・未来に私 自身が 傷つくのは 嫌だったか・嫌か
直示 好子嫌子 変化 願望
死んだ後に私は 極楽で 永遠に生き たい
死ぬ前に私は 極楽で 永遠に生き ていたか
生まれる前に私は 極楽で 永遠に生き ていたか
死んだ後に彼は 極楽で 永遠に生き たいか
死ぬ前に彼は 極楽で 永遠に生き ていたか
生まれる前に彼は 極楽で 永遠に生き ていたか
自分と彼が入れ替わったら死んだ後に私は 極楽で 永遠に生き たいか
自分と彼が入れ替わったら死ぬ前に私は 極楽で 永遠に生き ていたか
自分と彼が入れ替わったら生まれる前に私は 極楽で 永遠に生き ていたか
自分と彼が入れ替わったら死んだ後に彼は 極楽で 永遠に生き たいか
自分と彼が入れ替わったら死ぬ前に彼は 極楽で 永遠に生き ていたか
自分と彼が入れ替わったら生まれる前に彼は 極楽で 永遠に生き ていたか

危険な表現と代替案

私たちの文化は、良い気分主義(体験のコントロール)と、思考との字義どおりの相互作用とを育む文脈が非常に支配的かつ自動的なので(ACTをまなぶxviii)、危険な表現が世の中に蔓延している。それらの表現は誤って伝わりやすく(聞いた人が誤推測しやすく)、非機能的な思いや行動を助長させる危険が高いため使わないべきである。それらは自己啓発・スピリチュアル・仏教・宗教・心理学の各業界で特に蔓延している。以下に危険な表現と、それを回避するため代替表現・代替案を提示する。

内的行動の否定

  • 例:反応しない
  • 危険な点:下表聞き手1~のように誤推測させてしまう。特に指示に変化する。数秒前マジックより思いは直接制御不能。白熊のことを考えるなエクササイズより内的行動のコントロールは矛盾に陥る。ある概念の否定は広い範囲が指し示されてしまい、具体的にどのようにすれば良いかの解釈が聞き手に委ねられてしまう。
  • 代替案:数秒前マジック、直示的フレーム課題
表現・誤推測 変化
話し手 あのときは発生し終わっていく非機能的な思いに対して反応が発生していなかった 変化前:報告(タクト)、過去(時制)、特称
聞き手0 このときは発生し終わっていく非機能的な思いを観察しながら、反応の発生頻度を感じてみる 報告→実践(トラッキング)
聞き手1 このときはこれから発生する全ての思いに対して反応という行動をしてはいけない 報告→指示(プライアンス(死人のゴール))、過去→未来、特称→全称(一般化のしすぎ・全か無か思考)
聞き手2 意図すれば全ての思いに対して全く反応しない状態に制御可能 指示→制御方略(コントロールアジェンダ)
聞き手3 このときは全ての思いに対して全く反応していなかったことにすれば良い 指示→ルールとの不一致を回避
聞き手4 私は全ての思いに対して全く反応しない状態にできないのでだめだ 指示→自身への判断(個人化・結論の飛躍・レッテル貼り・感情的決めつけ・マイナス化思考)
聞き手5 楽になるためには全ての思いに対して全く反応しない状態にしなければ 指示→感情のゴール(すべき思考)
聞き手6 いつ発生するか分からない全ての思いに対して全く反応をしなくするため、全ての思いのことを常に意識しなければ 指示→制御方略
  • 危険な表現の列挙
    • 思わない、考えない、怒らない、求めない、争わない、力まない、比べない、抗わない、責めない、悩まない、感じない、恐れない、務めない、外れない、諦めない、願わない、逃げない、偏らない、おごらない、ごまかさない、だまさない、へつらわない、裁かない、咎めない、落ち込まない、決めつけない、追い出さない、影響を受けない、巻き込まれない、飲み込まれない、しがみつかない、抑え込まない、弱音を吐かない、絡み合わない、引き起こさない、行き詰まらない、追い詰められない、絡め取られない、させられない、イラッとしない、不安がらない、凝り固まらない、とらわれない、囚われない、縛られない、気にしない、名付けない、愚痴らない、はまらない、苦しまない、惹かれない、罠にはまらない、突き動かされない、関連付けない、劣等感を感じない、結び付けない、誘惑に負けない、自分のせいにしない、切り離されない、戦わない、理由づけない、進ませない
    • 悲しくならない、悲しくしない(辛く、寂しく、淋しく、怖くも)
    • 劣等感を抱かない、罪悪感を抱かない
    • 自己嫌悪に陥らない、自他を分別しない、自分に命令しない
    • 気にし過ぎ、思い込み過ぎ、考え過ぎ、悩み過ぎ、力み過ぎ
    • 無自覚な反応をしない、(すべてに)自覚的に反応する
    • 休む、休ませる、休憩する
    • 心を空っぽにする(頭の中も)
    • 怒りは心のムダづかい、思考にブレーキをかける、少欲知足(欲の発生と非発生)、心の防犯ベルを止める、スイッチをオフにする、無視する、自制心、私たちは無なんです、私たちは空なんです
    • どれも自分ではないのだ
    • 力まず、避けず、妄想せず
危険な表現の名詞 動詞 変化
思考,認知,意識,制御,参加,参与,反応,反射,解釈,推測,予測,予想,予期,連想,想像,空想,反芻,反駁,判断,評価,比較,否定,批判,抵抗,拒絶,排除,回避,遮断,抑圧,混同,妄想,執着,固執,固着,葛藤,苦悩,自動運転,自動操縦,最終評価,ジャッジ,意味付け,おしゃべり,コントロール,ラベリング,緊張,心配,不安,不満,うつ,ケチ,強欲,貪欲,虚無,嫉妬,無責任,時間,考え,思い,概念,観念,雑念,感情,意思,思惑,煩悩,衝動,後悔,軽蔑,侮辱,傲慢,怒り,悩み,我,エゴ,自分,私の物語,価値観,囚われ,自己嫌悪,自己イメージ,反応パターン,思考パターン,心のノイズ,心の雑音,心の映画,心,見方,視点,捉え方,考え方,不幸,犠牲者,期待,肯定 しない,せず,にならない,は存在しない,を変える,を変化させる,を止める,をストップする,を消す,を無くす,を落とす,を手放す,を解き放つ,を解放する,を解消する,を消去する,を脱する,が脱落する,を明け渡す,が死ぬ,を殺す,を亡くす,を破棄する,を捨てる,を分離する,を離れる,を遮断する,を減らす,を減少する,を統合する,を昇華する,を浄化する,を超える,の次元を超える,を超えた状態,を追い出す,を振り払う,を忘れる,を感じ切る,を弱める,を防ぐ,の生成を防ぐ,を鎮める,を静める,を膨らまさない,を加えない,を繰り返さない,を妨害しない,を回避しない,を避けない,を妨げない,を狭めない,を遮断しない,を手放さない,を追い出さない,を振り払らわない,を足さない,に何も足さない,を引かない,に何も引かない,を広げない,に支配されない,を増やさない,に栄養を与えない,に注意を向けない,にリソースを割かない,から目を逸らさない,を引きずらない,を難しくしない する(能動),なる(受動),しない(否定),ならない(受動否定),しようとする(試行),しようとしない(試行否定),させる(使役),させない(使役否定),させようとしない(試行使役否定),してはいけない(禁止),できなくなる(不可能受動),できなくする(不可能能動)

上記の組み合わせ表は https://docs.google.com/spreadsheets/d/1JiU9fGf7iN7wUz0qLPPNCcGWwggfIooFtv-He_IZt8k/edit?usp=sharing 参照。

内的行動の部分否定

  • 危険な点:下表聞き手1~のように誤推測させてしまう。
  • 代替案:数秒前マジック、直示的フレーム課題
  • 危険な表現の列挙:判断なしに観察する、判断しないで観察する、無判断に観察する、非判断的に受け入れる(評価、批判、否定、反応、抵抗、回避、比較、制御も)
表現・誤推測 変化
話し手 あのときは次々発生し終わる非機能的な思いを判断なしに観察していた 変化前:報告、過去、特称
聞き手0 このときは次々発生し終わっていく数秒前の思いを観察しながら、非機能的な思いに対する追加判断の発生頻度を感じてみる 報告→実践
聞き手1 このときはこれから発生する全ての思いを判断なしに観察しなければ 報告→指示、過去→未来、特称→全称
聞き手2 意図すればこれから発生する全ての思いを判断なしに観察できる 指示→制御方略
聞き手3 このときは全ての思いを判断なしに観察したことにすれば良い 指示→ルールとの不一致を回避
聞き手4 私は全ての思いを判断なしに観察できないのでだめだ 指示→自身への判断
聞き手5 楽になるために観察から全ての判断を無くさなければ 指示→感情のゴール
聞き手6 いつ発生するか分からない全ての判断の生成を防ぐため、全ての私的出来事が判断でないか判断しなければ 指示→制御方略

行動させない指示(内的行動に対する)

  • 危険な点:下表聞き手1~のように誤推測させてしまう。
  • 代替案:数秒前マジック、直示的フレーム課題
  • 危険な表現の列挙
    • 思いをそのままにする、思いをあるがままにする、思いをありのまま受け入れる、思いを現れるがままにする、思いを去るがままにする
    • 思いをただ観ている、ありのままに見守る、観察するだけ
    • (見るものは見ただけで、聞くものは聞くだけで、感じたものは感じただけで、考えたことは考えただけで)留まりなさい
    • ただ注意を向ける、流れに身を任せる、単に今ここに存在している
    • ラベリングした感覚をそれ以上追わない
    • 単なる「言葉」として認識する(ノイズ、雑音、おしゃべり、ラジオ、映像、映画、ニュースも)
表現・誤推測 変化
話し手 あのときは次々発生し終わる非機能的な思いがそのままだった 変化前:報告、過去、特称
聞き手0 このときは次々発生し終わっていく数秒前の思いを観察しながら、非機能的な思いがそのままでなかった頻度を感じてみる 報告→実践
聞き手1 このときはこれから発生する全ての思いをそのままにしなければ 報告→指示、過去→未来、特称→全称
聞き手2 意図すればこれから発生する全ての思いをそのままにできる 指示→制御方略
聞き手3 このときは全ての思いをそのままにしていたことにすれば良い 指示→ルールとの不一致を回避
聞き手4 私は全ての思いをそのままにできないのでだめだ 指示→自身への判断
聞き手5 楽になるためにこれから発生する全ての思いをそのままにしなければ 指示→制御方略

即時の効果を期待させる表現

  • 危険な点:即時の効果を提示すると聞いた人に低次のモデルが適用されてしまう。特に体験の回避を助長する。
  • 代替案:数秒前マジック、直示的フレーム課題
  • 危険な表現の列挙:楽になる、気分がよくなる、幸せになる、心地よくなる、自由な気分になる、自由になる、苦痛がなくなる、安穏、安心、脳が喜ぶ、ワクワク、楽しかない、愛しかない、あなたは特別、楽しむ、ほっとする(と良いサイン)・ぎゅつとなる(と悪いサイン)

抽象的な指示

  • 危険な点:「人を抱擁するかのように思いを抱擁する」とメタファで説明しているが、機能と対象が等位に結び付きにくいメタファのため「抱擁すれば救われる」など聞いた人に低次のモデルが適用されてしまう。具体的にどのようにすれば良いかの解釈が聞き手に委ねられてしまう。
  • 代替案:数秒前マジック、直示的フレーム課題
  • 危険な表現の列挙
    • 思いを抱擁する、思いを認める、思いに気づく、思いに感謝する、思いを抱きしめる、思いを受け流す、思いを聞き流す、思いを放っておく、思いを受け止める、思いから目覚める、思いを好きにさせておく、思いに耳を傾ける(思考、感情、雑念、価値観、煩悩、我、エゴ、悩み、苦悩、不安、葛藤、妄想、雑音、おしゃべりも)
    • 自分を慈しむ、自分を愛する、自分を敬う、自分を尊重する、自分を思いやる、自分に共感する、自分に感謝する、自分に優しくする、自分に自信を持つ、自分と向き合う、自分を理解する、自己理解、あなたはあなたのままで良いのだ
    • ありのまま受け入れる、あるがまま受け入れる、思いを受け入れる、自分を受け入れる、ありのままの自分を受け入れる(受け容れる、受容するも)
    • 心をオープンにする、自分をオープンにする、心を開く、自分を開く、すべてを迎え入れあるがままにしておく
    • リラックスする、緩める、穏やかになる、心を休める、楽にする、自由にする、緩和する、ほどく、余裕を持つ、温かい目で見守る、静寂、寂静
    • 客観的に観察する、好奇心を持って観察する
    • 受け身になる、受動的になる
    • 気づき、気づく
    • 心をここに置く、心を溶かす、心を込める
    • 避難する、降参する、降伏する、許す、諦める、あきらめる、明らかにする
    • 注意を深める、注意深く在る、柔軟な注意、注意を戻す、注意を払う、注意の分割
    • 目覚める、目を覚ます、意識的に行動する、意識する、棚上げする
    • 今とつながる、自分自身とつながる、共鳴する、調和する、焦点を合わせる、一瞬の感覚に集中する
    • 暴露する、晒す、曝す
    • 召喚する、呼び起こす
    • 反応の幅を広げる、視野を広げる、視野が広がる、広く気を配る、選択肢を増やす
    • 意識を広げる(心、注意も)、繋がる
    • 心を鍛える、脳を鍛える、脳の神経を鍛える、脳の筋トレ
    • 初めてかのように、初心に帰る
    • 命がかかっているかのように、人生をかける、全てが奇跡、当然のことが奇跡、一瞬に全力を傾ける、全身で現在を生きる
    • 考え方次第、光に包まれる、シンプルになる、咲く、咲かす、ありがたい、慈悲深く在る、存在する、役立てる、務める、直視する、戦う、克服する、耐える、我慢する、制限する、集中する、謙虚になる、二元論以前、在りなさい

空間的な分離や接近を意図させる指示

  • 危険な点:空間直示フレームは脱フュージョンの主要なメタファだが、下表聞き手1~のように誤推測させてしまう。特に「近づけられれば離れられ、その結果気分が良くなる・ましになるはず」と因果フレーム・制御方略が適用されてしまい回避に向かいがち。文脈的・肯定的・受容的などクライエントへの適用・導入方法を工夫する必要がある。
  • 代替案:数秒前マジック(数秒前マジックは時間フレームをベースにした指示であるため、回避・制御方略が適用されにくく、因果フレームが適切に適用されやすいことに注目)
表現・誤推測 変化
話し手 あのときは発生し終わっていく非機能的な思いに対して、幾分離れて観察できていた 変化前:報告(タクト)、過去(時制)、特称
聞き手0 このときは発生し終わっていく非機能的な思いに対して、近づき具合・癒着具合を感じてみる 報告→実践(トラッキング)
聞き手1 このときはこれから発生する全ての思いに対して、離れて(近づいて)観察しないといけない 報告→指示(プライアンス(死人のゴール))、過去→未来、特称→全称(一般化のしすぎ・全か無か思考)
聞き手2 意図すれば全ての思いに対して離すことが可能 指示→制御方略(コントロールアジェンダ)
聞き手3 このときは全ての思いに対して離れて(近づいて)観察していたことにすれば良い 指示→ルールとの不一致を回避
聞き手4 私は全ての思いに対して離れて(近づいて)観察できないのでだめだ 指示→自身への判断(個人化・結論の飛躍・レッテル貼り・感情的決めつけ・マイナス化思考)
聞き手5 楽になるためには全ての思いに対して離れて(近づいて)観察しなければ 指示→感情のゴール(すべき思考)
聞き手6 いつ発生するか分からない全ての思いに対して離れて(近づいて)観察するため、全ての思いのことを常に意識しなければ 指示→制御方略
  • 危険な表現の列挙
    • 思いから離れて観察する、思いに近づいて観察する
    • 自分と思いを分離する、自分と思いを一体化する
    • 思いを自分から外在化する、思いを自分と内在化する
    • 思いと距離を置く、思いと距離を置かない
    • 思いと距離をとる、思いと距離をとらない
    • 思いと同一化せず観察する、思いと同一化して観察する
    • 思いと一体にならずに観察する、思いと一体になって観察する
    • 思いと一体化せず観察する、思いと一体化して観察する
    • 思考を押しのける、思考を脇に置いておく
    • 私は「思考」ではない、「思考」は私ではない(思い、エゴも)
    • 自分自身は「思考」ではない、「思考」は自分自身ではない(思い、エゴも)
    • (感情・感覚・衝動の)居場所・スペース・受け容れる場所を作る
    • 思いを引き剥がす、思いを引き剥がさない
    • 思いから一歩引く、思いから一歩も引かない
    • 脱中心化
    • マインドから抜け出す、雲を抜け出す、パターンから抜け出す
    • 毒矢の喩え
    • 注意の分割(割り当てメタファ)
  • 危険なメタファ
    • 思考を手に持つメタファ、チェスボードのメタファ、流れに漂う葉っぱのエクササイズ

プロセスの停止を誤推測させる表現・指示

  • 危険な点:下表聞き手1~のように誤推測させてしまう。特に「止まる」が「止める」と誤推測されてしまう。
  • 代替案:数秒前マジックでプロセスを観察することを強調する
  • 危険な表現の列挙
    • (思考、映画の)自動運転が止まる、自動運転を止める、自動運転が停止する、自動運転を停止する(自動操縦も)(ストップする、ストップさせるも)
    • 過去と未来を消去する、過去と未来は存在しない
    • 今ここ、今ここを生きる、今ここになりきる、今ここに100%注意を向ける、今ここに完全に集中・没頭する、今ここにフォーカスを当てる
    • この瞬間を生きる、一瞬一瞬を丁寧に生きる、今この瞬間との接触
    • Doingモード、Beingモード
    • 今起きているすべてのことに意識を向ける、今起きていることに関わりを持つ、今に在る、現在に留まる
表現・誤推測 変化
話し手 あのときは非機能的な思考の自動運転が止まっていた 変化前:報告、過去、特称
聞き手0 このときは次々発生し終わっていく数秒前の思いを観察しながら、非機能的な思いが自動連鎖してしまう長さを感じてみる 報告→実践
聞き手1 このときは全ての思考の自動運転を止めなければ 報告→指示、過去→未来、特称→全称
聞き手2 意図すれば全ての思考の自動運転を止められる 指示→制御方略
聞き手3 このときは全ての思考の自動運転を止めていたことにすれば良い 指示→ルールとの不一致を回避
聞き手4 自分は全ての思考の自動運転を止められないのでだめだ 指示→自身への判断
聞き手5 楽になるために全ての思考の自動運転を止めなければ 指示→感情のゴール
聞き手6 いつ発生するか分からない全ての自動運転を止めるため、全ての自動運転を止めなければ 指示→制御方略

表:プロセスに関して推測された状態

概念\時間 過去 1分前 数秒前 数秒後 1分後 未来
認知的フュージョン 注目 注目
私的体験の回避 回避 回避
停止が推測された 注目
観察が推測された 考慮 注目 注目 考慮 考慮 考慮 考慮

※:見えていない、気づいていない、無視。

主体と客体を混同した指示

  • 危険な点:主体と客体が反転した結果、低次のモデルが適用されてしまう。
  • 代替案:視点から思考を観察するように指示する。
  • 危険な表現の列挙:視点を感じる、観察している自分に気づく

自己責任論を意図させる表現・指示

  • 危険な点:「選択した自分が悪いのだ」と悟らせてしまい、自己責任論を誤推測させてしまう。
  • 代替案:表現の有害性を強調する。
  • 危険な表現の列挙
    • あなたが選択した、あなたが抵抗している
    • 認知再構成法、認知の歪み、思考の誤り、非機能的な思考(認知行動療法)、不合理な信念(論理情動療法)
    • 思考は現実ではない、不安は現実ではない
    • 自分原因説、自灯明、あなたは犠牲者ではない、自分で想像・妄想した、人のせいにしない、直面する
危険な表現 代替表現
(思考・感情・観念に)しがみついている 取り込まれている・乗っ取られている・ハイジャックされている・囚われている
思考を手放す 思考を持つ

現実と私的体験を分離しない表現

  • 危険な点:「現実から逃げているわけではない」参照。自己責任論を誤推測させてしまう。
  • 代替案:脱フュージョンを意図させる表現を使用する。
  • 危険な表現の列挙:現実から逃げている(逃げている自分が悪い)、現実から目をそらしている(目をそらしている自分が悪い)

思考を軽視する表現

  • 危険な点:思考の影響力を軽視した結果、低次のモデルが適用されてしまう。
  • 代替案:本稿の考え枠組みを使用して言葉の影響力を説明し、言葉のプロセスを観察してもらう。
  • 危険な表現の列挙
    • 思考に過ぎない、思考でしかない、思考の限界(思い、考え、言語、概念、反応、想像、認識、解釈、連想、雑念、推測、予想、予期、予測、認知、記号、執着、レッテル、ラベリング、しがみつき、映画、イメージ、音、関係づけ、組み合わせも)
    • 単なる言葉に過ぎない、ただの言葉の羅列
    • 思考は現実ではない、(悟り・目覚めなどは)思考ではない
    • マインドフルネスは考えるというプロセスのことではない
    • 思考は言葉や映像以外の何ものでもない
    • 脳が作り出した虚構妄想の産物でしかない

マウンティングとして機能している表現

  • 危険な点:発した人の機能的(予測と影響の観点)な目的が低次かつ説明が足りないため、聞いた人に低次のモデルが適用されてしまう。
  • 代替案:発する人が本稿の考え枠組みを自身に適用する。そうすれば結果的に謙虚な対応になる。
  • 危険な表現の列挙
    • それは幻想である(イリュージョン、妄想、観念、概念、雑念、煩悩、エゴ、我、空想、想像、思惑、解釈、執着、固執、抵抗、抑圧、葛藤、反芻、回避、ジャッジ、判断、評価、批判、拒絶、葛藤、比較、思い込み、欲、怒り、無知、貪、瞋、痴、ただの思い、ただの考え、レッテル、ラベリング、しがみつき、カルマも)
    • あなたは内観が足りない(瞑想、修行、昇華、自制心、感謝、共感、理解、受容、注意、意識、暴露、視野、謙虚さ、気づき、許し、悟り、目覚め、あきらめ、慈しみ、向き合い、感じ切り、リラックス、フォーカシング、グラウンディング、スペースクリアリングも)

説明していない表現

  • 危険な点:表現に関する説明が別にされていないまたは不十分なため、具体的にどのようにすれば良いかの解釈が聞き手に委ねられてしまい、低次のモデルが適用されてしまう。
  • 代替案:本稿の考え枠組みを使用して説明する。今ここは直示と柔軟な視点移動で説明する。
  • 危険な表現の列挙:思考は実現する、原因と結果、あたりまえ、今ここ、法灯明、語りえぬものについては沈黙せねばならない、脳が変化する、筏の如く(筏が不完全、大多数は川を渡る前か途中)

その他の表現

危険な表現 危険な点 代替表現
あなた フュージョンを促さない あなたのマインド・自動思考・侵入思考・内的話し手
〜のために、〜のためではない、~ではない 同上 〜と共に
苦しみを切り抜ける、乗り越える、やり過ごす 同上 苦しみと一緒に存在する
真実、実在論、真理 真実感、実在感を相対化する試行を阻害する 真実度、真実感、実在度、実在感、真理度、真理感
考えるな感じろ 錆びているという記述に悪いという評価が自動的に付随するように、自分が感じた出来事に思考が密接に結びついている事実に気づくことを「妨害するような」Cfuncになっている。 考えを観察しましょう
純粋タクト、不純タクト 同上に陥る可能性が在る。全(100%)か無(0%)か思考の概念である。行動に複数の機能(Multiple Functions)がある観点を欠落させてしまう。 タクト率、マンド率
心のエネルギー 仮説構成概念を元に説明しているため、影響に関与しない結論に達しがち。 費やす時間

以下の表現は代替案がないため、表現の有害性を強調するに留める。

危険な表現 危険な点
脳が萎縮する 脅迫的な行動を助長する
~力 予測にも影響にも説明にも役に立たない

メタファの誘導について

メタファは、話し手の無理解により、聞き手に誤推測させてしまう。危険な誘導と機能的な誘導を提示する。

メタファ 危険な誘導 機能的な誘導
映画 あなたは映画を見ている者なのです。映画を消せば白いスクリーンだけが残ります。 映画を観察しましょう。ときに映画に引き込まれてしまう感覚を感じましょう。ストーリを変えたり消すことはできません。
スクリーンに思考を映す 同上 同上
ラジオのアナウンス ラジオを消せば静寂が訪れます。 ラジオの選局を変えたり消すことはできません。
ニュース 同上 同上
自動的なおしゃべり 自動的なおしゃべりを止めれば静寂が訪れます。 自動的なおしゃべりを変えたり消すことはできません。
雲と空 あなたは雲ひとつない青空なのです。青空になりましょう。台風は空を壊すことはできません。 雲を観察しましょう。雲に取り込まれてしまう感覚を感じましょう。雲の形を変えたり雲を排除することはできません。(空に関して言及しない)
泥水 あなたは水なのです。水になりましょう。 泥を観察しましょう。ちょっとでも動くと泥と水の境目が揺れ、ときに混ざります。
波と水、波と海 あなたは水なのです。水になりましょう。 波を観察しましょう。海は程度の差はあれど常に波打ち静まることはありません。
塩と海水 なし 塩は海水のしょっぱさを完全に知るために海水に溶けて一体になりました
思いは分泌物 思いは分泌物に過ぎません。 思いは役目を持った分泌物です。それが役立つ場合もあるし、胃酸過多になる場合もあります。
指月の喩 真実は指した指ではなく月なのです。指でなく月を見ましょう。 指差す行為とその意図を見ましょう。この月取ってきてという意図かもしれません。

その他の概念の、本稿の概念による説明

その他の概念 本稿の概念による説明
relational flexibility 柔軟な関係刺激の試行のスキル
関係フレーム 関係刺激
関係フレームづけ 関係刺激を確立させる手続き
arbitrarily applicable relational responding 同上
恣意的に適用可能な関係反応 同上の訳出
認知的フュージョン (非機能的な刺激の内容に対する)真実感、実在感が高い状態
literalization 同上
字義通りの解釈 同上の訳出
私的体験の回避 真実感、実在感を無くそうとする行動クラス
思い・感情の観察 数秒前の自分の思い・感情に対する柔軟な関係刺激の試行
思い・感情の実況中継 同上
ラベリング 思い・感情に名前をつける、柔軟な関係刺激の試行のテクニックの一つ
フュージョン 真実感、実在感が相対化される現象
思い・感情の外在化 同上
perspective taking フュージョンが関係刺激として確立されること
視点取得 同上の訳出
視座・視野・視点 同上の別の訳出
ウィリングネス 私的体験の回避の代替となる、機能的な行動クラス
アクセプタンス 同上(私的体験の回避に対することを強調している)
エクスポージャー アクセプタンスを発現させる一連の手続き
マインドフルネス 認知的フュージョンと私的体験の回避の代替となる、機能的な注意の向け方
概念としての自己 関係刺激の内容に依る真実感・実在感が中心となっている自己
プロセスとしての自己 関係刺激自体の強弱・生滅を認識している自己
文脈・視点としての自己 視点取得している自己、あるいは視点取得そのもの
参加者 プロセスとしての自己
観察者 文脈・視点としての自己
言語共同体 人間という種に特有な世界。文化、社会とも言う
理由付け ルールとの一致という、社会的な般性強化子(社会的価値)に駆動された行動

考え枠組みを利用して得られる仏教上の知見

概要 説明
慈悲の瞑想 柔軟な視点移動の試行と似ている。
慈悲の瞑想 オペラント条件づけを指し示している:好子が増加しますように。嫌子が減少しますように。好子の減少がなくなりますように。嫌子の増加がなくなりますように。
無住処涅槃(唯識) 関係反応的柔軟性と似ている。
無為 反応妨害・アクセプタンスと似ている。
中道(快楽・苦行以外の道) マインドフルネス(私的出来事への特定の接し方)と似ている。
精進 ウィリングネス・コミットメントと似ている。
五蘊 先行刺激と似ている。
煩悩 減少・喪失・否定恐怖症とみなす。
好子嫌子の時間変化のこと。有無、増減、生滅、強弱、垢浄など。
死に対する怖れや希望 関係刺激の真実感に因る。
無記説 関係刺激として記載して存在可能性を雑に検討可能。
一人の生体は社会通念的には一人 弁別刺激S_Dと捉える。
一人の生体は瞬間瞬間別の生体 刺激クラス(概念)による刺激性制御と捉える。
有無の見(迦旃延経) 発達段階における「いないいないばあ」に既に現れている。
業自性正見 業を習慣・学習と対応させれば妥当:習慣(だけ)を自己とする。(連合学習理論における)学習(の結果だけ)を自己とする。
十二縁起 偏った見解が維持されるプロセスを説明したもの。(ティク・ナット・ハンの般若心経より)
無常 発生した関係刺激の強弱に着目することと捉える。
好子嫌子の増減が機能(行動のねらい)であることと捉える。
無我 実在感を相対化することと捉える。
前世 対象にどのような機能が発現しそうかを指し示す機能を持つ。例:あなたの前世は医師である→あなたには医師のような性格傾向が含まれている。
無受(般若心経) 「受は実体としては存在しない」という意味であり、何かしらの機能を指し示す言語刺激としての「受」は否定していないと捉える。
身口意の三業 心に思った事は身体でやった事より重大とする業界関係者がいるが、思考の格上げ・認知的フュージョンであり誤りと捉える。
書く瞑想・まとめる瞑想 昔は紙がなかったので、脳内で整理されまとまっていくしかなかった。今はコンピュータ支援(computer-aided)によるシステムも開発可能。

参照先

コンテンツ 参照先キーワード
考え枠組み(モデル)とは 機能的文脈主義の科学哲学
関係刺激に対する考え枠組み 文脈的行動科学
心の位相的特徴 心の理論
直示deixis フレーム意味論
関係刺激 関係フレーム理論(RFT)、アクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー(ACT)
柔軟な視点移動 誤信念課題(心の理論)、直示的フレーム課題(Deictic Framing Task:DFT)(RFT)
有無の見 ティク・ナット・ハンの般若心経、迦旃延経、八不中道
煩悩 NHK こころの時代 唯識を生きる、五位百方

参考文献

  • 杉山尚子, 島宗理, 佐藤方哉, リチャード・W・マロット, マリア・E・マロット=著 (1998) 行動分析学入門. 産業図書.
  • ユーナス・ランメロ. ニコラス・トールネケ=著 松見順子=監修 武藤崇, 米山直樹=監訳 (2009) 臨床行動分析のABC. 日本評論社.
  • ニコラス・トールネケ=著 山本淳一=監修 武藤崇, 熊野宏昭=監訳 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ. 星和書店.
  • ティーブン・C・ヘイズ, カーク・D・ストローサル, ケリー・G・ウィルソン=著 武藤崇, 三田村仰, 大月友=監訳 (2014) アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版. 星和書店.
  • ポール・E・フラックスマン, フランク・W・ボンド, フレデリック・リブハイム=著 武藤崇, 土屋政雄, 三田村仰=監訳 (2015) マインドフルにいきいき働くためのトレーニングマニュアル 職場のためのACT. 星和書店.
  • ティモシー・A・サイズモア=著 坂井誠, 首藤祐介, 山本竜也=監訳 (2015) セラピストのためのエクスポージャー療法ガイドブック. 創元社.
  • マシュー・マッケイ, ジェフリー・C・ウッド, ジェフリー・ブラントリー=著 遊佐安一郎, 荒井まゆみ=訳 (2011) 弁証法的行動療法実践トレーニングブック. 星和書店.
  • 武藤崇 (2011) ACTハンドブック. 星和書店.
  • ウォルター・J・フリーマン=著 浅野孝雄=訳 津田一郎=校閲 (2011) 脳はいかにして心を創るのか. 産業図書.
  • 鈴木宏昭 (2020) 類似と思考改訂版. 筑摩書房.
  • 前野隆司=著 (2010) 脳はなぜ「心」を作ったのか(ちくま学芸文庫). 筑摩書房.
  • ジョン・R・サール=著 山本貴光, 吉川浩満=訳 (2018) MiND(ちくま学芸文庫). 筑摩書房.
  • 西郷甲矢人, 田口茂=著 (2019) <現実>とは何か. 筑摩書房.
  • デイヴイッド・ハープ=著 片山陽子=訳 (2000) なまけ者の3分間瞑想法. 創元社.
  • ティク・ナット・ハン=著 馬籠久美子=訳 島田啓介=翻訳協力 (2018) ティク・ナット・ハンの般若心経. 野草社.
  • ティク・ナット・ハン=著 山端法玄, 島田啓介=訳 (2011) ブッダの<気づき>の瞑想. 野草社.
  • ティク・ナット・ハン=著 池田久代=訳 (2011) 死もなく、怖れもなく. 春秋社.
  • ブッダダーサ比丘=著 (2019) 呼吸によるマインドフルネス. サンガ.
  • 武藤崇=編著 (2019) 臨床言語心理学の可能性. 晃洋書房.
  • ジェイソン・B・オルマー, スティーブン・C・ヘイズ, ロビン・D・ウォルサー=著 熊野宏昭, 高橋史, 武藤崇=監訳 (2009) ACTをまなぶ. 星和書店.
  • ローリー・A・グレコ, スティーブン・C・ヘイズ=編著 武藤崇=監修 伊藤義徳, 石川信一, 三田村仰=監訳 小川真弓=訳 (2013) 子どもと青少年のためのマインドフルネス&アクセプタンス. 明石書店.
  • ティーブン・C・ヘイズ, カーク・D・ストローサル=著 谷晋二=監訳 坂本律=訳 (2014) アクセプタンス&コミットメント・セラピー実践ガイド. 明石書店.
  • パトリシア・A・バッハ, ダニエル・J・ラモン=著 武藤崇, 吉岡昌子, 石川健介, 熊野宏昭=監訳 (2009) ACTを実践する. 星和書店.
  • ゲオルク・H・アイファート, ジョン・P・フォーサイス=著 三田村仰, 武藤崇=監訳 三田村仰, 武藤崇, 荒井まゆみ=訳 (2012) 不安障害のためのACT. 星和書店.
  • ジョセフ・V・チャロッキ, アン・ベイリー=著 武藤崇, 嶋田洋徳=監訳 武藤崇, 嶋田洋徳, 黒澤麻美, 佐藤美奈子=訳 (2011) 認知行動療法家のためのACTガイドブック. 星和書店.
  • 国里愛彦, 片平健太郎, 沖村宰, 山下祐一=著 (2019) 計算論的精神医学. 勁草書房.
  • ジョン・ベイリー, メアリー・バーチ=著 澤幸祐, 松見淳子=監訳 (2017) 行動分析的"思考法"入門. 岩崎学術出版社.
  • 三田村仰=著 (2017) はじめてまなぶ行動療法. 金剛出版.
  • 北西憲二 (2003) 森田療法で読むパニック障害. 白揚社.
  • 岡野守也 (1998) 唯識のすすめ. NHK出版.
  • 岡野守也 (2010) 仏教とアドラー心理学. 佼成出版社.
  • 加藤重広 (2019) 言語学講義. 筑摩書房.
  • アラン・クレメンツ=著 三木直子=訳 (2009) ダルマ・ライフ. 春秋社.
  • デビッド・D・バーンズ=著 野村総一郎, 夏苅郁子, 山岡功一, 小池梨花, 佐藤美奈子, 林建郎=訳 (2005) いやな気分よさようなら増補改定第2版. 星和書店.
  • デビッド・D・バーンズ=著 野村総一郎=監訳 関沢洋一=訳 (2005) フィーリングGoodハンドブック. 星和書店.
  • ラス・ハリス=著 武藤崇=監訳 (2012) よくわかるACT. 星和書店.
  • 熊野宏昭 (2012) 新世代の認知行動療法. 日本評論社.
  • 熊野宏昭 (2011) マインドフルネスそしてACTへ. 星和書店.
  • 熊野宏昭, 武藤崇=編集 (2009) こころのりんしょう第28巻01号ACT=ことばの力をスルリとかわす新次元の認知行動療法. 星和書店.

更新履歴

日付 変更内容
2019/01/06 初版
2019/01/24 図表を追加、構成を変更
2019/01/26 図表を追加
2019/02/06 説明を加筆修正
2019/02/08 説明を加筆修正
2019/02/09 図を追加
2019/02/10 構成を変更
2019/02/11 説明と図表を追加
2019/02/13 説明を修正
2019/02/17 構成を変更
2019/02/24 文言を修正
2019/02/26 文言を修正
2019/02/28 ACTの概念の横断的解釈を時間関係に変更
2019/03/04 文言を修正
2019/03/06 文言を修正
2019/03/07 文言を修正
2019/03/11 文言を修正
2019/03/13 文言を修正
2019/03/15 直示の時制とタクト/自己マンドがずれてしまう説明を追加
2019/03/17 プロセスに関して推測された状態を追加
2019/03/19 文言を整理
2019/03/20 タクト/自己マンドのズレを表化
2019/03/23 タクト/自己マンドのズレを移動
2019/03/26 説明を加筆修正
2019/03/29 構成を変更
2019/04/20 構成を変更、表現・誤推測を加筆
2019/04/22 表:思いは残り香を追加
2019/05/02 文言を修正
2019/05/06 文言を追加
2019/06/14 聞き手の説明を修正
2019/06/23 危険な表現と代替案の説明を修正
2019/06/29 心理学上の知見を修正
2019/07/17 数秒前の思いを指し示すメタファを追加
2019/07/18 数秒前の思いを指し示すメタファを更新
2019/08/11 図を修正
2019/09/01 即時の効果を期待させる指示を追加
2019/10/13 直示関係をずらすテクニックの分類を追加
2019/11/10 認知の歪みの分析、真実度などの独自用語を追加
2019/11/23 危険な表現と代替案の列挙を修正
2019/12/31 純粋タクトが危険な表現である理由を追記、構成見直し
2020/01/02 煩悩分割表に時間の直示を追記、煩悩の直示を入れ替えを追記、結果が行動を制御する図示を除去、シェルピンスキーのギャスケットによる随伴性の図示を除去
2020/01/05 煩悩の直示を入れ替えを追記、煩悩分割表を整理、説明の整理
2020/01/06 説明の追記と修正
2020/02/09 危険な表現と代替案の例を追記
2020/03/12 危険な表現と代替案の例を追記
2020/07/19 追記、文章を小幅に変更
2020/07/24 数秒前マジックの時間関係を充実化
2020/07/25 数秒前マジックの時間関係を微調整
2020/08/04 章立ての組み換え
2020/08/10 危険な表現と代替案に追加
2020/08/16 危険な表現と代替案にカテゴリ「マウンティングとして機能している表現」追加
2020/08/25 危険な表現と代替案に追加
2020/09/06 markdownソースのリンク追加、画像変更
2020/09/06 英単語を併記、ACTの行動随伴性に推測を記載、煩悩分割表の短期結果・長期結果を変更、危険な表現と代替案に追加
2020/09/06 誤記修正、危険な表現の否定の順序整理
2020/09/13 危険な表現の否定の指示を整理
2020/09/15 関係フレームの種類を一覧化、参考文献の一覧化
2020/09/27 危険な表現について、否定の指示と、思考を軽視する表現とを微調整。誤推測の原因となる現象としてデマの性質を記載、参考文献に情報を追加
2020/09/30 誤推測の原因となる現象に誤概念を記載
2020/10/01 誤概念の説明をメンテ
2020/10/08 スペルミス修正、参考文献を追加、危険な表現をメンテ
2020/10/10 構成を変更
2020/10/10 数秒前マジックのアニメgifを追加
2020/10/25 危険な表現をメンテ
2020/10/31 参考文献の表示変更、危険な表現と代替案をメンテ
2020/11/03 誤推測の関連に防衛機制を追加、危険な表現と代替案をメンテ
2021/05/20 誤推測の関連に認知バイアスヒューリスティックを追加
2021/05/21 冗長な表を整理
2021/05/30 誤推測の関連に認知的不協和を追加
2022/02/12 md(マークダウン)の厳密化、単語の調整
2022/03/02 空間的な分離や接近を意図させる指示に誤推測表を追加

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